
遺言書は「自分の意思を残すための大切な手段」ですが、実は何でも自由に書けるわけではありません。
法律的に効力を持つものと、あくまで想いを伝えるにとどまるものがあります。ここを理解しておくことが、実際に役立つ遺言を作る第一歩です。
遺言書に書けること(法律上効力がある内容)
1. 財産の分け方
- 誰に、どの財産を相続させるか
- 例:長男に自宅不動産を相続させる、次男に預金を渡す
2. 遺贈(いぞう)
- 相続人以外の人や団体に財産を渡すこと
- 例:孫や友人、NPO法人などへ寄付する
3. 相続人の廃除・廃除の取消し
- 著しい不仲や虐待があった場合等に、その人の相続権をなくすこと。ただし、遺言執行者による家庭裁判所の手続きが必要です
4. 遺言執行者の指定
- 遺言を実際に執行してくれる人を指定できる
- 弁護士や司法書士、信頼できる親族を選任するケースも多い
5. 未成年の子どもの後見人の指定
- 親が亡くなった後、未成年の子どもに誰を後見人にするかを決められる
遺言書に書けないこと(法律上効力を持たない内容)
1. 相続人の気持ちを強制すること
- 「長男は必ず同居すること」
- 「二男は家業を継がなければならない」
→ 法的には拘束力がありません。
2. 親族関係の変更
- 「次男を勘当する」
→ 遺言では親子関係を解消することはできません。
3. お墓や供養の方法を法的に縛ること
- 「この宗派で供養すること」
→ 法的効力はありませんが、希望として残すことは可能です。
付言事項という活用方法
遺言では、法律的な効力はなくても、「付言事項(ふげんじこう)」として気持ちを残すことができます。
例:
- 「妻にはこれまでの感謝を伝えたい」
- 「子どもたちには仲良く助け合ってほしい」
- 「財産の一部は社会の役に立ててほしい」
付言事項は強制力はありませんが、家族への温かいメッセージや、遺贈寄付の意図を伝える場として大きな意味があります。
まとめ
遺言書には、法律上効力のあることと、想いを伝えることしかできないものがあります。
両方をうまく組み合わせることで、家族に安心を残しつつ、自分の想いをしっかり届けることができます。
そしてもし「家族だけでなく社会にも役立てたい」という気持ちがあるなら、遺言に「遺贈寄付」の意志を明記し、付言事項でその想いを伝えるのも良い方法です。
遺言は単なる財産分けの手段ではなく、あなたの人生のメッセージなのです。